2019年7月6日土曜日

華氏451は何の温度?

「明日の最高気温は60度です。」

アメリカの天気予報にびっくりした方も多いだろう。現地で長く暮らしている方は慣れているけれど、日本とは温度の単位が違うのに私も戸惑った経験がある。アメリカでは「華氏」が採用されているのだ。

摂氏(Celsius)0℃=華氏(Fahrenheit)32F ←Fの左肩に小さな○がつく

華氏451Fは、紙が自然発火する温度。ちなみに摂氏では233℃くらいである。


レイ・ブラッドベリ原作の「華氏451」は、本の持つことや読書が禁じられた世界、すなわち全体主義国家を描いている。「華氏451」は1966年に映画化されている。

主人公は消防士のモンターグという男。消防は市民からの密告により出動、本を所持している者の家に押し入り、本を見つけだし、火炎放射器で焼却する。消防士が火をつけて回るという極めて倒錯した世界である。

モンターグは、当初は体制側の人間の典型として描かれており、特に何の感情もなく仕事をこなしていく。中堅どころの消防士として活躍し、そろそろ昇進かという話も出てくる。しかしある日、些細なきっかけで読書に興味を持ってしまう。

この映画の映像的特徴として、全体主義国家らしい平板さ、あるいは多様性の欠如というものが見て取れる。舞台は英語圏の国のある街のようだが、国や地域を特定できるもの、文化的な特徴と言えるものはほとんど描かれていない。登場人物の服も家も街並みも、(カラー作品だけど)全て色を失っている。おまけに消防士の制服や消防車、消防署の建物までもがダサい。雰囲気としてはサンダーバードを想起させる。

エンディングでは全体主義国家へのアンチテーゼも描いている。

この物語は、「あり得る並行世界」として受け止める知性を観客に要求している。とりわけ、現代の日本に生きる私たちは、これをただの架空の世界のお話に帰結させるわけにいかない事態が進行していることを忘れてはいけない。


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