2019年6月21日金曜日

ボーダーレス~僕の船の国境線~ その1

ボーダーレス~僕の船の国境線~

2014年のイランの映画。ある国境沿いの川に浮かぶ廃船。その中で暮らす少年は、捕った魚や貝のアクセサリーを露店に売りに行ったりして生計を立てている。廃船から見上げる小高い丘の上に、鉄条網と監視塔が見える。そのあたりを兵士らしき人影がウロウロしている。時折銃声が響く。兵士に発見されないように、少年は身を隠しながら生活している。たくましくも寂しく、そしてリスクと隣り合わせの暮らしだ。

この映画の特筆すべき点は、構成が極めてシンプルなこと。主要登場人物は4人。たった4人。そのうち(おそらく)中東の言語を話すのが先の少年を含めて2人。といっても別の言語なので通じない。もう1人は英語を話し、もう1人は言語を話すことさえない。つまり、この4人はお互いに言語によって意思疎通を図ることができない。

演出も奇をてらったものは何もない。BGMも極端に少ない。画角は全編を通して引きの画を巧みに織り交ぜ、飽きのこない映像に仕上げている。極めてシンプルな構成ながら、深遠かつ普遍的なテーマを見事に描き切っている。

サブタイトルも非常によくできている。国境が舞台なのでこのサブタイトルは当然なのだが、「船の国境線」とするところが秀逸である。船の国境線とは何ぞやと観客に思わせるこのセンテンス。だがこれは出来すぎたサブタイトル、というのが妥当だろう。

この船の中で何が起こるのか?この4人はうまくやっていくことができるのか?4人の存在は何を意味するのか?ネタバレ編と出来すぎたサブタイトルの理由は次回で。

0 件のコメント:

コメントを投稿