2018年6月13日水曜日

おだやかな革命の辺縁 その2


前回の続き。

映画「おだやかな革命」では、様々な地域での取り組みが
紹介されている。

やや意地の悪い表現をすれば、美しい物語ばかりだ。


だが、私はこういう地域の取り組みを根底から覆すような
要素を懸念する。

先人たちが積み上げてきた社会システムを毀損するもの。
それは内外から、緩急を問わずに降り積もってくる。

大体は多分に政治的な要素や世界の動きが絡む。
だからそういうことに対しての社会の反応は鈍い


美しい物語に浸っている間は心地よい。

だが社会システムを毀損するものに注意を払い、
検証し、取り除いていく試みは、恐ろしく地味で
膨大な労力を必要とする。

そういった作業の専門性と必要性が、日本では
どういうわけか理解されていないように感じる。
私たちの権利を損なうものへの危機感が恐ろしく
希薄ではないだろうか。

地域での試みを守る役割。
いってみれば灯台守のようなポジション。

嵐の予兆を感じ取り、海域の安全に留意し、遭難者を
救助し、あるいは敵艦隊の襲来をいち早く伝える。



美しい物語を紡ぐ努力は大事だが、灯台守に最大限の
敬意を払い、協力を惜しまないこともまた地域を
つくることの一環ではないだろうか。



おだやかな革命の辺縁 その1


映画「おだやかな革命」の上映が全国の劇場で始まった。
東海地方では、名古屋のシネマテーク上映中
(6月29日まで)。また岐阜では7月7日からCINEXで、
7月20日からはシネックスマーゴで上映開始。


上映スケジュールの詳細は各劇場のHPで。


私は先だって開催された試写会でこの映画を観た。
まだご覧になっていない方も多いと思うので、本稿では
内容にはなるべく触れずにこの映画を論じると言う
冒険を敢行する。



私は鑑賞中、ずっと「この映画では描かれていないこと」が
頭に浮かんで離れなかった。

地域づくりに取り組んでいながら、うまくいっていない
地域、試行錯誤しながら迷って苦しんでいるあの人の顔。

NPOの世界には昔から「男性の寿退社」という言葉がある。
家計を支えるほどの収入を得られることが難しく、結婚
したり子どもができたりするタイミングで、男性職員が
転職してしまうことが多いのだ。私の知り合いにも
何人かこういう方がいる。正職員の平均年収は上昇して
きてはいるものの、未だ一般企業との差は歴然として
存在する。

同様に、地域づくりに取り組んでいる人でも、特に目だった
成果を挙げられず、また収入も不安定なため、辞めてしまう
方もこれまた多い。

「多い」というのは主観的だが、ともかく成功事例ばかり
では無いということは留意しておいたほうがいいのでは
ないか。

突き詰めれば個人の生き方というか、あるいは覚悟が
問われるのではないかと思う。

映画の中では、地域の中でとても生き生きと楽しく
生きる人々が登場する。だからと言って、「そうか、
オレもあんなふうにやればいいんだ」と早合点する
べきではない。

成功が覚束ないことだってある。
それでも飛び込んでいくなら。


失敗することを躊躇わないでほしい。

地域の中でもがいている人や企業へ戻っていった
人を笑わないでほしい。


いろんな人の顔を思い出さずにはいられない映画だった。