2019年10月20日日曜日

ザ・ロブスターが描くディストピア

ザ・ロブスター
2015年 ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作
主演:コリン・ファレル
監督:ヨルゴス・ランティモス



禁独身社会VSリア充追放ゲリラの壮絶な争い、というのは煽りすぎか。

パートナーと別れてしまった人は「ねるとん的リゾートホテル」へ。ここで45日以内にパートナーを見つけられないと動物に変えられてしまう。どんな動物になりたいかは申告可能。「狩り」で森に潜む独身者を捕獲すれば1日延長。徹底した思想は人間を生産性で語るどこかの国の政治家に通じるものがある。

主人公の男は奥さんに逃げられてこのホテルに収容される。

「私はロブスターになりたい」

海底で100年以上ひっそりと生きられるというのが理由。この地味な男を演じるのは、ゴールデングローブ賞受賞のコリン・ファレル。下っ腹の膨らんだ姿は堪らなく物悲しい。

このホテルは、いわば「性的全体主義ホテル」。異性への興味を維持するためのあるレギュレーション(破るとんでもない罰が!)。独り身の悲劇を叩き込まれる寸劇。この狂気じみた描写が、間の悪いコントのように延々と続く。不吉なヴァイオリンの調べが笑いたい衝動を打ち消す。

「こんな世界はいやだ!」

逃げ出してみると、森に潜んでいるゲリラに迎えられる。独り者でも気兼ねなく過ごせるはずが、皮肉なことに主人公の男はここである女性と仲良くなってしまう。恐ろしい制裁が彼らを待ち受けていた・・・




大きな軸としてイデオロギーの違い、あるいは異端の排除というのがこの映画で描かれている。が、そんな堅苦しいものではなく、これはコメディだろう。しかし笑えない!でも純愛についても考えてしまう。そんな倒錯した時間を過ごしたい方にこそお勧めしたい。

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